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思えば遠くへ来たもんだ

 私が話すたび、じっと耳を傾け、少し間をおいてから静かにお話を始めるアンカテさんだったが、「波」の話だけは即座に反応されていた。それをアンカテさんが「波」という現象に強い関心を持たれている証拠と捉えるのは、考えすぎか。人の世に起こることは、ある時点で切断して分析することで分かることも多いが、それによって大事なことを見落とすことも少なくない。流れで物事を見るセンスは非常に重要だと思う。
 詰まらぬ例で恐縮だが、今般の転職の流れは「前職に不満を持っていたら→あるエージェントが引き抜きに来て→好条件に思わず腰を上げたが→結局は外資との交渉にビビって→腰の下ろし先に迷っていたら→運よく声を掛けてくれた人がいた」というものだ。これを「私が転職を決断した動機は云々」として説明しようとしてもまるでムリで「しゃべればしゃべるほどドツボにはまる」(クレイジーケンバンド「12月17日」)。出会いも別れも、一連の流れの帰結として捉えるしかない。

 イノベーションを始めとして、人の世を語る「歴史」の醍醐味は、そういう「流れ」を感じ取るところだけれども、気をつけなければならないのは、「因果応報」の因果関係が、誰にでも分かるような論理で、連続的に起こるわけではないということだ。
 例えば、シェーンベルクが、ベートーベンやブラームスの正統な後継者を自認していたというエピソードには、これこそが歴史であると感銘を受ける一方で、こういう天才というか気が違っている人によって、凡人には非連続的にしか見えない歴史が作られるのだなあと、ため息をつかされる。

ブラームスの弦楽六重奏の楽譜に触発された

シェーンベルクが同じ編成の「浄められた夜」を書き、

その延長線上が、なぜか十二音技法になる。

 おそらく、この帰結はシェーンベルクにとっては必然で疑いのないところなのだが、哀しいかな、ほとんどの人に理解できない。ただ、虚心に聴けば、本当は分かるのだ。ロマンの極地には、すでに崩壊の種が埋め込まれているということが。でもシェーンベルク自身はウィーンの美しい伝統の方にしか意識が行っていないから、自分が来た場所の深刻さに気づいていないし、彼にとっては崩壊ではないのかもしれない。ただ、何かが崩壊したことは確かだ(たぶん、キュビズムにも同じようなプロセスがあると思う)。

 だからビジネススクールの「ケーススタディ」で教えるべきは、イノベーションのロジックは、誰にでも分かるように説明できるものばかりでなく、むしろコツコツやっているうちに、当人達も想定せぬ遠くにいつのまにか来てしまっているようなものが少なくない、ということではないか。

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